三室戸寺山門。本尊は千手観音菩薩。

参道の右手に5,000坪の庭園が広がり、境内奥に本堂が立つ。

 

 

第10番「三室戸寺」

 

白洲正子さんの「西国巡礼」から引用する。

石段の下には、浮舟の墓がある。いうまでもなく「源氏物語」宇治十帖の主人公で、昔見たときは、おかしく思ったが、今は簡単に笑えない心地がする。小説と現実をごちゃまぜにするのは日本人の癖で、いまだにその傾向がないとはいえないが、今となっては紫式部も和泉式部も、浮舟と大差はない。大差がないばかりか、物語と現実の世界が、それほど違うものか、疑わしくさえ思われる。(以上引用)

 

山吹や宇治の焙炉(ほいろ)の匂うとき(芭蕉)

 

これは三室戸寺で詠まれた句ではない。元禄4年(1691)春、故郷の伊賀上野から上京する直前に詠んだとされる。しかし、この句に触れたとき、てっきりこの場所で詠まれたものと思った。

 

 

 

あたり一面黄色の鮮やかな山吹が咲き誇り、山の下からいい香りが昇ってくる。蒸した茶葉を焙炉で手もみしているのだろう。

色彩鮮やかで、鼻を衝くいい香り、そしてマキのはぜる音、五感を刺激する秀句と思われるが、上京前に詠まれているとはさらに驚かされる。

 

白洲正子さんは芭蕉句碑について一切触れていない。白州正子さんが三室戸寺を訪れたのは東京オリンピックの開かれた1964年頃なので、ひょっとしたら句碑は建立されていなかったのかもしれない。

私のように勘違いをした人が、ここに芭蕉句碑を建立したのだろう。あと100年もすれば、ここで芭蕉が句を詠んだという伝説が生まれるかもしれない。何が事実で、何が真実か、時間の経過とともにどうでもよくなるような気もする。

 


枯山水庭園

 

府指定文化財の三重塔

元禄17年(1704)建立

 

勝運のなで牛

 

山吹や宇治の焙炉の匂うとき(芭蕉)

 

池泉庭園

 

本堂は文化11年(1814)に再建された。

 

 

福徳ウサギ

 

宇治橋のマンホール